これは昔話なのだが。
酒の席でちらっと口にした個人的に痛い話があって。
飲んだ後の小雨混じりの移動中、
途中で終わったその話の続きに関心を示してくれた人が居た。
「やだったらいいんですけどー、でもちょっと聞きたいなぁ」
もとより好感は持っていた人だったので、そんな風に言ってくれたことが少し嬉しかった。
それからほどなくして彼には彼女が出来、
この淡い片恋のようなものは形をとる前に終わるのだが
その彼が好きだったのが「演劇集団キャラメルボックス」である。
その為、「キャラメルボックス」に対する関心は芽生えた。
しかしその時点で既にその劇団を知っていて、
彼とその話題で盛り上がる可愛らしい娘さんがおりまして。
知りたいけれど知りたくなくなって。
つまりはまだ自分の知らぬ良いものを
他人は知っていて共有し合えるという状態への嫉妬で。
それから5年が経った。キャラメルボックスは20周年を迎えたという。
目下上演中の演目がとても良かったと、
キャラメルボックス好きの友人から観ることを勧められた。
「行ってごらんよ後悔しないから。お芝居好きでしょう?」
「好きでしょ」と言われてようやく呪縛が解けた。
さまざまな片意地が邪魔をしてその劇団への興味を自分で認められずに居たこと。
そんなこんなで今サンシャイン劇場でやっている
『クロノス』を観てきた。
任意のものを短時間だけ過去へ送りこめるタイムマシン、「クロノス・ジョウンター」。
『クロノス』は、このクロノス・ジョウンターをめぐる人々の物語である。
十五年来の片思いの人のため、自らクロノスに乗り込み過去へ飛ぶことを決意する青年。
しかしその道は決してたやすくはなく。
それでも彼は進む。ひるむことなく。
その姿は観客に訴える。
運命は苛酷で、しかしそれでも人はどこまでも強く在ろうとすることもできると。
芝居ってやつはどうしようもなく荒唐無稽だなと見ていて思う。
しかしそれを言うならおそらく生きること自体が荒唐無稽でもある。
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「言葉のあやじゃないんですか?」「理系はそんな難しいことは言わない」
って台詞があったんだけど
「言葉のあやじゃないんですか?」「理系にそんなものはない」
の方がいいと思うな(とかいう
ていうかそんなにみんな笑ってなかったけど笑いどころだよねこれ!