2008年02月14日

『ピアノの森』(2/14)

モーニング移籍以降の分(10巻〜14巻)を久々に読んだ。

諸事情で不安定な状態で読み始め、最初は冴とカイの恋愛パートだったため多少そちらに感情移入して落ち着かぬ思いをしたものの、誉子がカイに会うためコンクールに出まくっていたくだりで腰が据わった。

求道する様は美しい。しかしそこに特定の人間に会いたいだとか認められたいだとかいう目的を絡めてしまったとき、音楽は必ずしも救いではなく呪いに変わる。けれどもその呪いによって再び救いに引き戻されもする。どちらが正しいとか過ちだとかではなく、密接に絡み合い引き剥がせない救いと呪いとが彼らの歩みを進めて行く。

そしてこの狂騒を私自身はおそらく半分だけ知っている。半分だからこそ知らぬ闇もあれば知らぬ快楽もあることが、この作中で描かれたショパンコンクールの様子によって際立つ。それが良かったのか悪かったのかは分からないが、確実なのはもう今生で残りの半分を味わうことは叶わぬということだけだ。

おそらく芸術とは、禍福の全てを呑み込む混沌の中、溺れながら天に向かって伸ばした手のようなものだろうと思う。

投稿者 narukami : 2008年02月14日 15:13 | トラックバック
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