「ゲート」の一つである本屋に魍魎が現れたという情報が入り排除に向かう。いちいち戦闘していたらおそろしく消耗するであろう夥しい数の魍魎がそこにはいた。Rの機転で入り口に罠を張り、その本屋は幻影で作ったものだと魍魎たちに告げる。外へ逃げ出そうとする魍魎を一網打尽にすることに成功。
「ゲート」を守るにはゲートキーパーの資格がなければならない。
ゲートキーパーは常人には成し得ない程の戦闘能力、再生能力を誇り、頭をもがれでもしない限り死ぬこともない。それと引き換えに体の一部分のどこかを失うことになり、常人よりもはるかに長いその一生の間をただ一人の相手としか結ばれ得ぬ定めを背負う。ゲートキーパーの契約はただ一度だけ行うことができる。Rは勿論この時点で既にゲートキーパーであった。Rが体のどの箇所を失ったか、それは一見して分からなかったし知らされたこともなかった。だが私は自分が彼の唯一のパートナーであると信じて疑わずにいた。
本屋の奥には「ゲート」がある。「ゲート」内はとてつもなく広い球体のドームで、プラネタリウムの如く内側に星がちりばめられており、長いシャフトで球体の中心部に固定される椅子に座ってそれらを眺めることができる。縦横に広がる星空の中で、ゲートキーパーの常人より長い人生であれども宇宙にありてはほんの一瞬であること、またその中で争ったりする所業の刹那さを痛感させられる。
不意に襲われた魍魎に対する戦闘で必要となったため、私自身も瞬時にゲートキーパーの契約を行った。戦闘の後、通常であればゲートキーパーの契約時に副作用的に起こる身体異状が全く起きなかったことをRに指摘される。
「・・・もしかしたら既に契約が済んでいたんじゃないか?」
そんな記憶は全く無い。にもかかわらず、何故か心当たる部分のある推論。既にゲートキーパーであったとしたら、現在ここにいる、その記憶を保持していない私は一体誰なのか?
他の同業者とドームの中で話す。その人の言動から「"二人目"を恋したことがあるでしょう」と指摘するR。苦笑するその人。
「何でも分かってしまうからイヤでしょうこの人?」
ゲートキーパーはその契約により愛した人が死ぬなどして失われた後に二人目以降の誰かを恋うることだけはできてもその恋を叶えることはできない。禁じられているわけではなくただそう定められているだけだ。常人よりも長くを生きる上でその孤独を一人で背負わねばならない。彼はそれを経験した人なのだろうということを思った。