祈りよ闇を照らせ
[II]

「ヒール!」
首都の一角でアコライトの少女が回復の術式を唱えると、傷つき疲れきったアサシンの表情が晴れやかになった。

「どうもありがとう」
「お気をつけて」立ち去るアサシンの背中に微笑んでアコライトが手を振る。

そこへ女プリーストがひょいと顔を覗かせた。
「ふふ、頑張ってるわね」
「あ……見られてしまいましたか」
アコライトが照れたように俯く。

「おかしな子ね、そんな顔して?私達の務めを果たしているだけなのでしょう」
「それは……そうなのですが」
アコライトは決まりが悪そうである。

「私がアコライトになれたのは姉さまのお蔭ですもの……
こうして一人前のような顔をして、人からお礼を言われているのが何やら気恥ずかしくて」

プリーストはにっこりと笑った。
「あら、私は何もしていないわ。貴女を育ててくれたのは……」

そこへ一人の男騎士が姿を現した。
アコライトが回復役を頼まれてよく共闘する騎士である。
彼は、共闘時だけでなくことあるごとに花や戦利品などを持って、
プリーストとアコライトが二人で暮らす首都のこの一角へと立ち寄るのであった。

「ん……話し中だったかな」
「あら、いいのよ。そろそろ来る頃かなと思ってた」プリーストが微笑む。
「今日も、狩りに誘ってもいいかな」
騎士がアコライトの方へ顔を向けた。アコライトは幾分頬を赤らめて頷いた。

そして、騎士とアコライトは連れ立って狩りへと出掛けて行った。

騎士とプリーストとは、知り合った当初に何度か共に戦闘したことがあった。
そうしていくらか言葉を交わすようになるうち彼の責任感の強さにふれ、
プリーストはアコライトのことをこの騎士に頼むに至ったのだ。
「貴女を育ててくれたのは彼よ」と、
プリーストがみなまで言わなかった言葉の先をアコライトも分かっていたことだろう。

騎士は。
引き受けた以上面倒をよく見てくれているのだろうと、思う。
しかし、彼が毎日のように少女を誘いに来る際の、僅かな緊張をたたえて紅潮した顔。
狩りの済んだ後に、アコライトに戦利品や稼ぎの分配を渡しながら見せる、あの満ち足りた表情。
あれは、紛れもなく。

一方で、アコライトが時々
戦闘とは関係のないところで傷を作って帰ってくることに、思いをめぐらせた。

プリーストは僅かに表情を固くした。

あの夜。
森の中に響く長い悲鳴を聞きつけて駆けつけたプリーストが、
傷だらけのノービスを抱きかかえ、ヒールにポータル、持てる限りの術式を駆使して
狼の群れが跋扈するその場から離脱し首都へと連れてきたのだ。
そのノービスがアコライトとなり、今ここに暮らしているのである。


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